• 2026年7月24日

収縮期血圧(上の血圧)と拡張期血圧(下の血圧)はどちらが重要?【内分泌代謝科専門医が解説】

健康診断や病院で血圧を測った際に、

  • 「上の血圧だけ高いですね」
  • 「下の血圧が高めです」
  • 「血圧が140/90mmHgを超えています」

と言われたことはありませんか?

血圧は「上(収縮期血圧)」と「下(拡張期血圧)」の2つの数字で表されます。

患者さんからは、

  • 「上と下、どちらが重要ですか?」
  • 「下が正常だから安心ですか?」
  • 「上だけ高いのは年齢のせいですか?」

といった質問をよく受けます。

結論から言うと、収縮期血圧(SBP)と拡張期血圧(DBP)のどちらも重要ですが、年齢や血圧のパターンによって、その意味やリスクは異なります。

今回は、それぞれの血圧が示す意味や、どのような場合に注意が必要なのかについて解説します。


高血圧の診断基準

日本高血圧学会では、診察室で測定した血圧が

  • 収縮期血圧(SBP)140mmHg以上
  • または拡張期血圧(DBP)90mmHg以上

のいずれかを満たす場合、高血圧と診断されます。

つまり、

  • 150/80mmHg
  • 130/92mmHg
  • 160/100mmHg

はいずれも高血圧です。

「下が正常だから大丈夫」「上だけ高いから様子を見よう」と自己判断することはおすすめできません。


収縮期血圧と拡張期血圧は何が違う?

収縮期血圧(SBP)は、心臓が血液を送り出す瞬間の最も高い血圧です。

一方、拡張期血圧(DBP)は、心臓が拡張して血液をため込んでいる間の最も低い血圧を示します。

同じ「血圧」でも、それぞれ反映している体の状態は異なります。

  • 収縮期血圧:大動脈の硬さ(動脈硬化)や心臓から送り出す力を反映
  • 拡張期血圧:細い血管(末梢血管)の抵抗や交感神経の働きを反映

そのため、「上だけ高い高血圧」と「下だけ高い高血圧」では、背景にある病態や将来のリスクも異なります。


血圧パターンごとの特徴

血圧パターン特徴主なリスク
収縮期血圧のみ高い高齢者に多く、動脈硬化や血管の弾力性低下を反映脳卒中、心筋梗塞、心不全、慢性腎臓病、死亡リスクが高い
拡張期血圧のみ高い若年〜中年に多く、末梢血管抵抗の上昇を反映将来の高血圧進展、脳心血管疾患リスクの上昇
収縮期・拡張期とも高い最も典型的な高血圧心血管イベントリスクが最も高い

上の血圧(収縮期血圧)が高い場合

特に50~60歳以上では「上の血圧」が重要です

加齢とともに大動脈は徐々に硬くなり、血管の弾力性が低下します。

その結果、収縮期血圧は上昇し、拡張期血圧は横ばい、あるいは低下するようになります。

例えば、160/70mmHgという血圧をみると、「下は正常だから安心」と思われる方も少なくありません。

しかし実際には、このような血圧は動脈硬化が進行しているサインであり、高リスクと考えられます。


なぜ危険なのでしょうか?

収縮期血圧が高い状態では、

  • 大動脈の動脈硬化
  • 左心室への負担(左室肥大)
  • 脳や腎臓への圧負荷
  • 脈圧(収縮期血圧と拡張期血圧の差)の増大

が起こります。

これにより、

  • 脳卒中
  • 心筋梗塞
  • 心不全
  • 慢性腎臓病

などのリスクが高くなります。

高齢者では拡張期血圧よりも収縮期血圧の方が心血管イベントのリスクと関連すると考えられています


下の血圧(拡張期血圧)が高い場合

一方、40~50歳代では拡張期血圧も重要です。

例えば、130/98mmHgという血圧では、大動脈の硬化よりも、細い血管(末梢血管)の抵抗が高くなっている状態を反映していることが多くみられます。

背景には、

  • 肥満
  • 塩分の摂り過ぎ
  • 運動不足
  • ストレス
  • 睡眠時無呼吸症候群
  • 喫煙

などが関与していることがあります。

拡張期高血圧は若年〜中年に多くみられ、将来的に収縮期血圧も上昇し、持続性高血圧へ進展する可能性があります。

そのため、「若いから大丈夫」と放置することはおすすめできません。


上だけ高い人と下だけ高い人、どちらが危険?

例えば、

  • 160/70mmHg
  • 130/100mmHg

では、どちらが危険なのでしょうか。

どちらも高血圧ですが、一般的には160/70mmHgの方が予後は悪いと考えられています。

その理由は、160/70mmHgでは高度の動脈硬化が進行している可能性が高く、脳卒中や心不全などのリスクがより高いためです。

一方で、130/100mmHgでは若年者に多く、生活習慣の改善によって正常化するケースも少なくありません。

もちろん、糖尿病や慢性腎臓病などを合併している場合には、年齢だけでなく全身のリスクを総合的に評価することが重要です。


「脈圧」にも注目しましょう

血圧を見る際には、脈圧も重要な指標です。

脈圧とは、

収縮期血圧 − 拡張期血圧

で求められます。

例えば、

  • 170/70mmHg → 脈圧100mmHg
  • 150/95mmHg → 脈圧55mmHg

となります。

一般的に脈圧が60mmHg以上になると、大動脈の動脈硬化や血管の硬さが進行している可能性が高く、高齢者では脳卒中や心不全、心血管死亡のリスクが高まることが知られています。

そのため、170/70mmHgのような血圧では、「上の血圧が高い」だけでなく、「脈圧が大きい」という点にも注意が必要です。


年齢によって重視する血圧は変わります

血圧の評価では、年齢も重要です。

年齢重視する血圧
40歳未満拡張期血圧も重要
40~60歳収縮期・拡張期とも重要
60歳以上収縮期血圧をより重視

若い方では拡張期血圧の上昇が将来の高血圧のサインになることがあります。

一方、高齢者では収縮期血圧が動脈硬化の進行を反映し、心血管イベントを予測する最も重要な指標となります。


外来ではこのように考えます

高血圧を診療する際には、単に「上が高い」「下が高い」という数字だけではなく、その背景も含めて評価します。

  • 収縮期血圧が高い場合:大動脈の動脈硬化や高齢者のリスクを重視します。
  • 拡張期血圧が高い場合:肥満や睡眠時無呼吸症候群、交感神経の亢進、若年高血圧などを考えます。
  • 両方が高い場合:心血管イベントのリスクが最も高く、積極的な治療が必要です。
  • 収縮期血圧が高く、拡張期血圧が低い場合(脈圧が大きい場合):動脈硬化が進行している可能性が高く、特に脳卒中や心不全に注意が必要です。

当院からのメッセージ

高血圧は「自覚症状がないまま進行する病気」です。

しかし、放置すると脳卒中や心筋梗塞、心不全、慢性腎臓病など、命に関わる病気のリスクを高めます。

健康診断で

  • 「血圧が高い」と言われた
  • 「上だけ高い」と指摘された
  • 「下だけ高い」と言われた
  • 家庭血圧が高い

という方は、一度医療機関で詳しい評価を受けることをおすすめします。

当院では、家庭血圧や生活習慣、動脈硬化のリスク、糖尿病や脂質異常症などの合併症も含めて総合的に評価し、一人ひとりに合わせた高血圧診療を行っています。


まとめ

  • 高血圧は「収縮期血圧140mmHg以上」または「拡張期血圧90mmHg以上」で診断されます。
  • 収縮期血圧と拡張期血圧はどちらも重要ですが、年齢によって重視するポイントが異なります。
  • 高齢者では収縮期血圧が最も重要な予後予測因子であり、「上だけ高い」高血圧でも注意が必要です。
  • 若年者では拡張期血圧の上昇が将来の高血圧につながるサインとなることがあります。
  • 脈圧の増大は動脈硬化の進行を示す重要な指標です。
  • 血圧は数字だけではなく、年齢や生活習慣、合併症を含めて総合的に評価することが大切です。
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