• 2026年6月1日

健診で「中性脂肪が高い」と言われたら?【内分泌代謝科専門医が解説】

健康診断で「中性脂肪が高い」と指摘されたことはありませんか?

中性脂肪やコレステロールは、自覚症状がほとんどないため、

「少しくらい高くても大丈夫だろう」「薬を飲むほどではないのでは?」

と考えてしまう方も少なくありません。

しかし、中性脂肪高値は肥満や脂肪肝だけでなく、動脈硬化を進行させ、将来の心筋梗塞や脳梗塞のリスクにもつながります。

今回は、中性脂肪が高いと言われたときに知っておきたいポイントを、内分泌代謝科専門医がわかりやすく解説します。


中性脂肪とは?

中性脂肪は、いわゆる「脂(あぶら)」のことで、トリグリセライド(TG)とも呼ばれます。

食事で摂取したエネルギーのうち、使い切れなかった分は中性脂肪として体内に蓄えられます。特に炭水化物や糖質を過剰に摂取すると、肝臓で中性脂肪が合成されます。

中性脂肪は本来、身体にとって重要なエネルギー源ですが、増えすぎると健康に悪影響を及ぼします。

血液中の中性脂肪が高い状態が続くと、内臓脂肪として蓄積しやすくなり、肥満や脂肪肝の原因となります。また、糖尿病や高血圧とも深く関連しており、いわゆるメタボリックシンドロームの中心的な異常の一つです。

中性脂肪が高くなる原因としては、

  • 食べ過ぎ
  • 糖質や甘い飲み物の摂り過ぎ
  • アルコールの飲み過ぎ
  • 運動不足
  • 肥満
  • 糖尿病
  • 遺伝的体質

などがあります。

LDLコレステロール高値は遺伝の影響を強く受けることがありますが、中性脂肪高値は生活習慣の影響を受けやすいことが特徴です。そのため、食事や運動、体重管理によって大きく改善する可能性があります。


中性脂肪が高いと何が問題?

中性脂肪が高い状態が続くと、

  • HDLコレステロール(善玉コレステロール)が低下する
  • 動脈硬化を起こしやすいLDL粒子が増える
  • 脂肪肝の原因になる
  • 糖尿病やメタボリックシンドロームと関連する

など、さまざまな病気につながります。

さらに中性脂肪が非常に高い場合(500~1000mg/dL以上)には、急性膵炎という重い病気を引き起こすことがあります。


実は「中性脂肪」も動脈硬化の原因になります

以前は、「動脈硬化=LDLコレステロール」というイメージが強く、中性脂肪はそこまで重視されていませんでした。

しかし近年では、中性脂肪が高い状態そのものが動脈硬化リスクと関連することが分かってきています。

中性脂肪が高い状態では、

  • レムナントリポ蛋白
  • small dense LDL(小型で密度の高いLDL)

と呼ばれる動脈硬化を起こしやすい脂質が増加します。

そのため、中性脂肪高値は心筋梗塞や脳梗塞などの動脈硬化性疾患のリスク上昇につながると考えられています。


レムナントリポ蛋白とは?

レムナントリポ蛋白とは、中性脂肪を多く含む脂質が体内で処理される途中にできる物質です。

中性脂肪が高い状態では、このレムナントリポ蛋白が増えやすくなります。

レムナントリポ蛋白は血管の壁に入り込みやすく、動脈硬化を進める働きがあることが分かっています。

そのため、LDLコレステロールがそれほど高くなくても、中性脂肪が高い方では心筋梗塞や脳梗塞のリスクが高くなることがあります。

糖尿病、肥満、脂肪肝、メタボリックシンドロームの患者さんでは増加していることが多く、近年注目されている動脈硬化リスク因子です。


small dense LDLとは?

中性脂肪が高い状態では、LDLコレステロールの「量」だけでなく、「質」も悪くなることがあります。

その代表が「small dense LDL(スモールデンスLDL)」です。

これは通常のLDLコレステロールよりも小さくて密度が高く、血管の壁に入り込みやすい特徴があります。

また、酸化と呼ばれる変化を受けやすく、動脈硬化を進めやすいことが分かっています。

そのため、LDLコレステロールの数値がそれほど高くなくても、中性脂肪が高い方では動脈硬化が進みやすい場合があります。

つまり、中性脂肪が高いことは単に「脂肪が多い」というだけではなく、血管に悪影響を与える脂質を増やしてしまう可能性があるのです。


脂質異常症とは?

脂質異常症とは、血液中の脂質バランスが崩れた状態をいいます。

具体的には、

  • LDLコレステロールが高い
  • HDLコレステロールが低い
  • 中性脂肪が高い

のいずれかがみられる状態です。

以前は「高脂血症」と呼ばれていましたが、HDLコレステロールは低いことが問題になるため、現在は「脂質異常症」という名称が使われています。


なぜ脂質異常症を放置してはいけないの?

脂質異常症で問題になるのは、「症状がないまま動脈硬化が進行すること」です。

動脈硬化が進行すると、

  • 心筋梗塞
  • 狭心症
  • 脳梗塞
  • 閉塞性動脈硬化症

などの重大な病気につながる可能性があります。そのため「今は症状がないから大丈夫」とは言えません。


健診でどのくらいなら要注意?

日本動脈硬化学会では、以下を脂質異常症の診断基準としています。

  • LDLコレステロール:140mg/dL以上
  • HDLコレステロール:40mg/dL未満
  • 中性脂肪(空腹時):150mg/dL以上
  • Non-HDLコレステロール:170mg/dL以上

また近年では、食後高脂血症との関連から随時採血での中性脂肪も重視されており、中性脂肪(随時)175mg/dL以上が異常の目安とされています。


中性脂肪が高いときは糖尿病にも注意

中性脂肪高値の背景には、「インスリン抵抗性」が隠れていることがあります。

特に、

  • 肥満
  • 脂肪肝
  • 高血圧
  • 血糖値やHbA1cの上昇

を伴う場合には、糖尿病やメタボリックシンドロームの可能性も考慮する必要があります。

当院では中性脂肪だけでなく、糖尿病や脂肪肝も含めて総合的に評価しています。


コレステロールや中性脂肪の薬はいつから必要?

治療方針は、

  • 年齢
  • 高血圧
  • 糖尿病
  • 喫煙
  • 家族歴
  • 心筋梗塞や脳梗塞の既往

などを総合的にみて判断します。

また、中性脂肪が非常に高い場合には、急性膵炎予防のためにも薬物治療が必要になることがあります。


中性脂肪を下げる薬にはどんなものがある?

まず基本となるのは生活習慣改善です。

しかし、生活習慣の改善を行っても

  • 中性脂肪高値が持続する
  • 糖尿病や脂肪肝を伴う
  • 動脈硬化リスクが高い

場合には、薬物治療を検討することがあります。

フィブラート系薬剤

中性脂肪を低下させ、HDLコレステロールを増加させる薬です。

従来から広く使用されていますが、腎機能低下例や高LDLコレステロール血症に対するスタチンとの併用時には注意が必要です。

パルモディア(ペマフィブラート)

パルモディアは中性脂肪を低下させる目的で使用される薬剤です。

中性脂肪低下作用に加え、レムナントリポ蛋白の改善やHDLコレステロール上昇が期待されます。

糖尿病や脂肪肝を伴う中性脂肪高値の患者さんにも使用されており、現在の脂質異常症診療で広く用いられている薬剤の一つです。


今日からできる中性脂肪改善のポイント

食事

中性脂肪改善で最も重要なのは食事です。

特に、

  • 甘い飲み物
  • お菓子
  • 夜食
  • アルコール

の見直しが重要です。

中性脂肪は脂質の摂り過ぎだけでなく、糖質の摂り過ぎでも上昇します。

  • 清涼飲料水
  • ジュース
  • スイーツ
  • 深夜の炭水化物

を控えることが効果的です。

また、

  • 揚げ物や脂身を減らす
  • 野菜を増やす
  • 魚を積極的に食べる

ことも推奨されます。

運動

ウォーキングや自転車などの有酸素運動は、中性脂肪低下やHDLコレステロール改善に役立ちます。

週150分程度の運動が推奨されています。食後の軽い運動も効果的です。

禁煙

喫煙はHDLコレステロールを低下させ、動脈硬化を強く進行させます。

禁煙は最も効果的な動脈硬化予防の一つです。


当院からのメッセージ

脂質異常症は症状がないため、放置されやすい病気です。

しかし、心筋梗塞や脳梗塞はある日突然発症します。

健康診断で中性脂肪やコレステロール異常を指摘された場合は、「まだ症状がないから大丈夫」と考えず、一度ご相談ください。

当院では採血結果だけでなく、高血圧・糖尿病・肥満・脂肪肝なども含めて総合的に評価し、一人ひとりに合った治療方針をご提案しています。

また、現在の動脈硬化の評価として、第2・第4土曜日には超音波検査技師による頸動脈エコー検査を実施しています。


まとめ

  • 中性脂肪高値は動脈硬化リスクと関連します
  • レムナントリポ蛋白やsmall dense LDLが心血管リスクに関与します
  • 放置すると心筋梗塞や脳梗塞につながる可能性があります
  • 中性脂肪高値は脂肪肝・糖尿病・メタボリックシンドロームとも関連します
  • 治療の基本は生活習慣改善です
  • 必要に応じてパルモディアなどの薬物療法を行います

健康診断で異常を指摘された方は、将来の血管病予防のためにも早めの対策をおすすめします。

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