- 2026年10月6日
甲状腺の血液検査、TSH・FT3・FT4って何を見ている?【内分泌代謝科専門医が解説】
病院での血液検査で、
「TSHが高いと言われた」
「FT4が低いと言われた」
「甲状腺の数値が異常だった」
と言われて、不安になったことはありませんか?
甲状腺の血液検査では、主にTSH、FT4、FT3という項目を調べます。
それぞれ何を調べているのか分かりにくい検査ですが、これらの数値を組み合わせることで、甲状腺が正常に働いているか、甲状腺ホルモンが多すぎるのか、少なすぎるのかを評価することができます。
今回は、甲状腺の血液検査でよく測定するTSH・FT4・FT3について、それぞれの役割と検査結果の見方を解説します。
甲状腺とは?
甲状腺は首の前側、のどぼとけの少し下にある臓器です。
蝶が羽を広げたような形をしており、甲状腺ホルモンを作っています。
甲状腺ホルモンは、
- 体のエネルギー代謝を調節する
- 心臓の働きや体温を調節する
- 腸の動きや発汗などに影響する
- 成長や発達に関わる
など、全身のさまざまな働きに関係しています。
甲状腺ホルモンが多すぎても、少なすぎても体にさまざまな症状が出ることがあります。
TSHとは?
TSHは、甲状腺刺激ホルモン(Thyroid Stimulating Hormone)のことです。
TSHは脳の下垂体から分泌され、甲状腺に対して、「甲状腺ホルモンを作ってください」と指令を出す、「司令塔」のようなホルモンです。
体に甲状腺ホルモンが不足すると、脳は甲状腺を刺激するためにTSHを増やします。
反対に、甲状腺ホルモンが多くなると、TSHは低下します。
FT4とは?
FT4は、遊離サイロキシン(Free T4)という甲状腺ホルモンです。
甲状腺で作られる甲状腺ホルモンの一つで、血液中では多くがタンパク質と結合した状態で存在しています。
そのうち、タンパク質と結合していない「遊離型」の甲状腺ホルモンをFT4として測定します。
FT4は、甲状腺がどの程度甲状腺ホルモンを作っているのかを評価するうえで重要な検査です。
一般的には、
FT4が高い → 甲状腺ホルモンが多い状態
FT4が低い → 甲状腺ホルモンが少ない状態
と考えます。
FT3とは?
FT3は、遊離トリヨードサイロニン(Free T3)という甲状腺ホルモンです。
FT4と同じく甲状腺ホルモンの一つですが、FT3はFT4よりも甲状腺ホルモンとしての作用が強いことが特徴です。
FT3は甲状腺から直接作られるだけではなく、体の中でFT4から変換されて作られます。
そのため、FT3は甲状腺ホルモンの作用の強さを評価するうえで参考になります。
特に甲状腺機能亢進症では、
FT4はそれほど高くないのにFT3が高い
という「T3優位型」の甲状腺中毒症がみられることがあります。
そのため、TSHやFT4の結果だけでは判断しにくい場合に、FT3を測定することがあります。
TSH・FT4・FT3はどう組み合わせて見る?
甲状腺の血液検査は、1つの項目だけを見るのではなく、TSH・FT4・FT3を組み合わせて判断します。
代表的なパターンを見てみましょう。
TSH高値+FT4低値
甲状腺ホルモンが不足している状態で、甲状腺機能低下症を考えます。
代表的な病気として橋本病(慢性甲状腺炎)があります。
症状として、疲れやすい、寒がり、体重が増える、むくみ、便秘、眠気、などがみられることがあります。
TSH低値+FT4高値
甲状腺ホルモンが過剰になっている状態で、甲状腺機能亢進症・甲状腺中毒症を考えます。
代表的な病気がバセドウ病です。
症状として、動悸、手のふるえ、発汗が多い、暑がり、体重減少、疲れやすい、などの症状がみられることがあります。
TSH高値+FT4正常
甲状腺ホルモンは保たれているものの、TSHが高くなっている状態で、潜在性甲状腺機能低下症と呼ばれることがあります。
必ずしもすぐに治療が必要とは限らず、年齢、症状、TSHの程度、抗甲状腺抗体、妊娠の有無などを考慮して判断します。
TSH低値+FT4正常
FT4は正常ですが、TSHが低下している状態で、潜在性甲状腺機能亢進症と呼ばれることがあります。
初期の甲状腺機能亢進症や甲状腺中毒症のほか、一時的な変化のこともあるため、症状や経過を含めて判断します。
FT3が正常なら甲状腺は正常?
必ずしもそうとは限りません。
甲状腺機能低下症では、FT3が正常でもFT4が低下していることがあります。
これは、体がFT4からFT3への変換を調整することで、FT3をある程度維持するためです。
そのため、甲状腺機能低下症の評価では、TSHとFT4が特に重要です。
一方、甲状腺機能亢進症では、FT4よりもFT3が先に上昇することがあります。
そのため、甲状腺機能亢進症が疑われる場合にはFT3を測定することがあります。
甲状腺の血液検査だけで病気が分かる?
甲状腺ホルモンの状態は血液検査で詳しく調べることができますが、血液検査だけですべての甲状腺疾患が分かるわけではありません。
例えば、甲状腺に「しこり」があっても、甲状腺ホルモンが正常なことは珍しくありません。
そのため、
- 首の腫れ
- 甲状腺のしこり
- 首の圧迫感
- 嚥下時の違和感
などがある場合には、甲状腺超音波検査(エコー検査)を行うことがあります。
また、バセドウ病が疑われる場合にはTRAb、橋本病が疑われる場合には抗TPO抗体や抗サイログロブリン抗体など、原因を調べるための検査を追加することがあります。
TSH・FT4・FT3の検査結果は「組み合わせ」が大切
甲状腺の血液検査では、
TSH=甲状腺に指令を出すホルモン
FT4=甲状腺ホルモンの状態を評価する重要な指標
FT3=作用の強い甲状腺ホルモン
があり、検査結果の解釈は単純ではありません。
上記に挙げたパターン以外にも脳の下垂体からのTSH分泌の異常で検査値に異常が出ることがあります。
年齢、症状、服薬、妊娠の有無、甲状腺疾患、下垂体疾患の治療歴などによっても判断が変わります。
「TSHが高いと言われたけれど、どういう意味?」
「FT4が少し低いけれど大丈夫?」
「TSHが低いと言われた。バセドウ病?」
など、検査結果について気になることがあれば、一度ご相談ください。
当院からのメッセージ
甲状腺の病気は、症状がほとんどない段階で健康診断や他の病気の検査をきっかけに見つかることもあります。
一方で、動悸、体重減少、手のふるえ、疲れやすさ、寒がりなどの症状が、甲状腺の病気によるものと気づかれていないこともあります。
当院では、TSH・FT4・FT3などの血液検査に加えて、甲状腺超音波検査などを組み合わせ、甲状腺疾患の診断・治療を行っています。
健康診断などで甲状腺の異常を指摘された方や、甲状腺の症状が気になる方は、お気軽にご相談ください。