• 2026年6月8日

健康診断で「甲状腺が大きい」と言われたら?【内分泌代謝科専門医が解説】

健康診断の結果で、

「甲状腺腫大を認めます」
「甲状腺の精査をおすすめします」

と書かれていて不安になったことはありませんか?

甲状腺腫大と聞くと、「甲状腺がんではないか」と心配される方も少なくありません。

しかし、多くは橋本病や良性の結節などであり、必ずしも甲状腺がんを意味するわけではありません。

一方で、甲状腺機能異常や甲状腺がんが見つかることもあるため、超音波検査による評価が重要です。

今回は、健康診断で甲状腺腫大を指摘されたときに考えられる病気や、検査の流れについて解説します。


甲状腺とは?

甲状腺は首の前側、のどぼとけの少し下にある臓器で、蝶が羽を広げたような形をしており、甲状腺ホルモンを分泌しています。

甲状腺ホルモンは、

  • 交感神経を刺激して心臓の働きや体温、発汗を高める方向に調節する
  • 細胞の新陳代謝を活発に、エネルギー代謝をよくする
  • 胎児や子供の成長や発達を促進する

など重要な役割を果たしています。


甲状腺腫大とは?

甲状腺は重さ15〜20g程度の小さな臓器ですが、通常より大きくなった状態を「甲状腺腫大」といいます。

健康診断では医師の触診によって「甲状腺が大きいかもしれません」と甲状腺腫大を指摘されることがあります。

ただし、触診だけでは甲状腺が本当に大きいのか、またその原因までは分かりません。

特に女性ややせ型の方では、正常な大きさの甲状腺でも触れやすく、健常な方であっても「甲状腺腫大の疑い」と判定されることがあります。一方で、実際に甲状腺が腫大している場合や、結節(しこり)が存在する場合もあります。

そのため、甲状腺の状態を正確に評価するためには、甲状腺超音波検査(エコー検査)が重要です。エコー検査では甲状腺の大きさだけでなく、結節の有無や炎症の所見なども確認することができます。


甲状腺腫大の原因

橋本病(慢性甲状腺炎)

日本で最も多い原因の一つです。自己免疫の異常によって甲状腺に慢性的な炎症が起こる病気で、初期には症状がないことも多く、健康診断がきっかけで見つかることがあります。

進行すると、甲状腺ホルモンが低下して、

  • 疲れやすい
  • むくみ
  • 寒がり
  • 体重増加

などの甲状腺機能低下症状が出現することがあります。


バセドウ病

自己免疫の異常によって、甲状腺ホルモンが過剰に分泌される病気です。エコーでは、甲状腺全体が腫大し、血流が亢進しているかを確認します。

症状として、

  • 動悸
  • 発汗増加
  • 手のふるえ
  • 体重減少

など甲状腺中毒症状(甲状腺ホルモン過剰症状)がみられます。


甲状腺結節(しこり)

甲状腺にできるしこりです。良性結節が大部分を占めます。一方で、一部には甲状腺がんが含まれるため、超音波検査による評価を行い、結節の大きさによっては穿刺細胞診による評価が必要です。

腺腫様甲状腺腫

甲状腺全体が大きくなったり、複数の結節ができたりする良性疾患です。中高年女性によくみられます。


その他

  • 亜急性甲状腺炎
  • 無痛性甲状腺炎

などでも甲状腺が大きくなることがあります。


甲状腺腫大を指摘されたら何を調べる?

血液検査

症状や超音波検査所見から必要に応じて、甲状腺ホルモンや自己免疫の状態を確認します。

主な検査項目は、

  • TSH
  • FT4
  • FT3
  • TRAb
  • 抗TPO抗体や抗サイログロブリン抗体
  • サイログロブリン

などです。

甲状腺超音波(エコー)検査

甲状腺診療で最も重要な検査です。

超音波検査では、

  • 甲状腺の大きさ
  • 甲状腺の血流
  • 炎症の有無
  • 結節の有無や性状
  • 頸部リンパ節の腫れ

などを詳しく評価できます。痛みはなく、安全な検査です。


甲状腺がんの可能性は?

甲状腺結節を指摘されたからといって、必ずしも甲状腺がんではありません。

甲状腺結節には良性と悪性がありますが、甲状腺結節のおよそ9割以上は治療の必要がない良性のものです。また、悪性であっても多くは進行が緩やかで予後良好ですが、一部には注意が必要なタイプもあるため適切な評価が重要です。

一般的には10mm以上の結節や、10mm未満でも超音波検査で悪性を疑う所見(微細石灰化、不整形、被膜外進展疑いなど)がある場合、20mm以上の嚢胞を認める場合には次の穿刺吸引細胞診を検討します。


穿刺吸引細胞診とは?

穿刺吸引細胞診とは、採血で使用する細い注射針を甲状腺結節に刺して、結節の細胞を直接採取し、顕微鏡で良性か悪性かを調べる検査です。超音波画像を見ながら複数回針を刺したり、またいくつか結節がある場合にはそれぞれに穿刺吸引細胞診を行うことがあります。痛みは採血と同じ程度で、麻酔の必要はありません。

当院では穿刺吸引細胞診は実施しておらず、血液検査の結果に応じて近隣の総合病院にご紹介させていただいています。


その後のフォローは?

良性と診断された場合は、ほとんど治療の必要がありませんが、良性と診断されても、まれに時間の経過とともに大きくなることがあります。そのため定期的に超音波検査を行い、大きさや形に変化がないかを確認し、血液検査で甲状腺機能異常がないかを確認します。変わりなければ徐々に受診間隔を延ばしていきます。

悪性と診断された場合は、大きさと腫瘍の種類によって検査や治療を決めていきます。


当院からのメッセージ

健康診断で甲状腺腫大を指摘されても、多くの場合は慌てる必要はありません。

しかし、原因によっては治療や定期的な経過観察が必要になることがあります。

  • 首の腫れが気になる
  • 動悸や体重減少がある
  • 疲れやすい
  • 健康診断で甲状腺異常を指摘された

という方は、一度甲状腺専門医による評価をおすすめします。

当院では甲状腺超音波検査と血液検査を組み合わせ、甲状腺疾患の診断・治療を行っています。


まとめ

  • 甲状腺腫大とは甲状腺が大きくなった状態です。
  • 原因として橋本病、バセドウ病、甲状腺結節などがあります。
  • 甲状腺腫大=甲状腺がんというわけではありません。
  • 血液検査と超音波検査が診断の中心で、必要に応じて穿刺吸引細胞診を行います。
  • 健康診断で指摘された場合は、一度専門医による評価を受けましょう。
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